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いよいよ明日開幕!リオ五輪女子ゴルフ/夢を掴んだ大山志保

いよいよ4年に1度のスポーツの祭典、リオ・オリンピックが開催される。

今回は1904年以来、ゴルフが正式競技に選ばれ、ゴルフファンの関心も高いようだ。といいたいところだが、開催前からいろいろな問題が露呈し、先行きを不安視する声が多いのが気になる。

まず、ジカ熱や治安の悪さを理由にして、早くから男子トッププロが不参加を発表している。世界ランク1位のジェイソン・デイを筆頭にダスティン・ジョンソン、ジョーダン・スピース、ローリー・マキロイのトップ4が不在。

全米プロを終え、終盤のプレーオフ・シリーズを迎えるPGAツアーを優先するというのも分からないではないのだが…。というのも、サッカーイベントの最高峰がオリンピックではなく、ワールドカップのように、ゴルフには4大メジャートーナメントがあるからだ。

多くのプロフェッショナルが大金のかかったツアー競技に照準を定めるのは当然であり、単純に不参加を非難できない問題だ。日本ゴルフ協会は金メダルなら1000万円のボーナスを出すと発表したが、国内ツアーで優勝すれば、それ以上の大金を得られる。

ちなみに、他競技を見てみると、水泳が金メダルなら3200万円、自転車競技が3000万円、陸上が2000万円出るという。世界の頂点であるべき金メダルをお金に換算するのも下衆な話かもしれないが、テンションの上がらないプロも当然いるだろう。

また、日本では深夜の時間帯がテレビの生中継というのもキツい。4日間、予選落ちもない、世界のトッププロもいないストロークプレーをダラダラ放映されても、視聴率は期待できないだろう。男子で60番目に選出されたポルトガルの選手の世界ランキングは392位だ。果たしてトップの選手とはどれくらいのストローク差になるのだろう?

リオ・オリンピック次第では、ゴルフ競技が次の東京大会で最後ではないかという懸念する声も出てくる可能性があるかもしれない。そんななか、日本からは池田勇太、片山晋呉、野村敏京、大山志保が代表選手として出場する。

2つの不思議なダブルボギーが大山に夢の切符を与えた

「オリンピックで日の丸を背負って戦いたい」と、早くから公言していたのは大山志保だ。そのためには7月11日の時点の世界ランクで男女60人の出場選手が決まることになっていた。

同ランク15位以内までは1か国につき最大4人。同16位以下は最大2人が出場権を得ることができるのだが、大山はほぼ絶望的であった。4月の時点ではアメリカツアーを主戦場にする野村敏京が世界ランク36位、宮里美香が38位、大山は47位だったからだ。

まず、最初にリオ出場を引き寄せたのは4月のフジサンケイレディスだった。

前週、第二の故郷である熊本でのKKT杯バンテリンレディスが大地震でキャンセル。だから大山は翌週の川奈で絶対に勝ちたかった。最終日、1打リードしていたアン・ソンジュが18番ホールのフェアウェイにいたとき、大山は半ばあきらめかけながら練習グリーンにいた。

グリーンの真ん中に乗せれば、ほぼ確実に優勝のアン。悪くてもプレーオフという展開だったのだが…。

ところが、アンのショットは右にプッシュアウトし、グリーン手前の深いバンカーに入れてしまった。

もう1メートル左に行っていれば、グリーンオンしていただろうというショットだった。ギャラリーも大山もこの時点でもまだアンが寄せて勝ち、あるいは寄らずにプレーオフだろうと思っていたのだが、アンのまさかの3パットでダブルボギー。

この棚ボタの優勝で大山の世界ランクが上がったのだが、まだまだ先は長い。宮里美香がまだ上にいるし、オリンピックに意欲を見せる渡邉彩香も4位に入り、追い上げてきていた。今度はその渡邉彩香がまさかのダブルボギーを叩いてしまうのだから、ゴルフは分からない。舞台はアメリカだ。

全米女子オープン、最後のリオ・オリンピック出場を懸けたが、大山は無念の予選落ち。渡辺に俄然チャンスが出てきたが、またしても最終日の18番ホールでドラマが起きた。

30位につけていた渡邉はこの順位をキープすれば、ランクアップは確実で、大山を逆転し、リオの切符はほぼ手中に入れていた。残り64ヤード、そこからグリーンに確実に乗せればいい。プロゴルファーにとって、難しいショットではない。

しかし、サンドウェッジを持って、渡邉の夢を乗せたショットはグリーン手前の池に吸い込まれていった。呆然とする渡邉の表情が今も忘れられない。

こんなことがあるだろうか。信じられない最終日、最終ホールの2つのダブルボギーが大山の夢を叶えたのである。もちろん、女神が微笑んだくらいでは、リオの切符は手に入らなかっただろう。チャンスを自ら引き寄せたのは大山自身なのだから…。

大山志保を応援したくなるいい話

フジサンケイレディス勝利インタビューで大山は「熊本のために一生懸命頑張りました。賞金を全額寄付したいです」

優勝賞金は1440万円。日本女子プロ協会を通じて熊本地震の被災者への義援金として寄付する考えを明かした。

大山は宮崎県出身だが、ゴルフ留学で熊本女子中央高(現熊本中央高)に進学し、日大中退後も腕を磨くために4年間在住した。多感な7年間を過ごした熊本は、第二の故郷なのである。その地が前週、大地震に襲われた。大山の気持ちは決まった。川奈での賞金は全額寄付すると…。

実は大山の大きな寄付はこれが初めてではない。2011年の東日本大震災の後には、500万円を寄付。その前の2007年に起きた新潟県中越沖地震の被災地支援にも義援金を送り続けている。

昨年の6月に開催された「ヨネックスレディース」の優勝賞金1080万円も全額寄付するなど、近年宮城と新潟で開催されるトーナメントの獲得賞金は毎年大半を寄付している。フジサンケイレディースの賞金を合わせて、その総額は5000万円近くとみられている。

冒頭でビッグマネーのトーナメントに照準を合わせるのもプロフェッショナルと書いたが、大山のように社会に貢献するのもプロフェッショナルだ。

日本ではセレブや芸能人などの有名人がこのような行動を起こすと、やれ偽善だ売名行為だとネット、メディアで叩かれるという風潮がある。そこで、海外や日本の被災地に数億円の寄付をしている俳優の杉良太郎さんの言葉をここで紹介したいと思う。

「はい、偽善です。売名行為です。みなさんも偽善で売名行為でいいですから、被災者に寄付してください」と。なんともかっこいいじゃないですか。

そんなわけで、リオ・オリンピックでの大山志保の活躍を期待したいと思うのは私一人ではないでしょう。トレードマークの五木ガッツポーズが何回見られるのか、楽しみなオリンピックである。

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